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ヒマラヤ・世界第8位高峰マナスル峰(8,163m)遠征 vol.15【アンバサダー 村山 孝一】

「いつかは8,000m!」 登山を始めた高校1年生からの、自分自身への合い言葉。アフリカ大陸、南米大陸、ヨーロッパ大陸、北米大陸への遠征を経験し、いよいよアジア大陸・ヒマラヤ8,000m峰に挑戦です。

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村山孝一(むらやま・こういち)
キャリア20 年の元プラネタリウム解説員。海外遠征中は登攀だけでなく、高所での星空観望や天体撮影にも取り組む。都内の社会教育複合施設の分館長に就任、教育や学術及び文化に関する各種事業を担当。
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ヒマラヤ・世界第8位高峰マナスル峰(8,163m)遠征 vol.15


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星空の魅力に説明は必要ありませんが、暗い星から消えてゆく夜明けの様子も素敵です。その場所と天候から、同じ光景は二度と見られません。そこがヒマラヤ・マナスル峰ならなおさらです。



二度も来られる峰ではないからです。夜明けの時間帯も、ゆっくり寝ている場合ではありません。



気持ち良く寝ているパートナーを起こさないよう、静かにテントのファスナーを開けます。頭を出せる隙間が出来たら、歯を磨くことと同じぐらいの日課となっている夜明け空チェックです。


薄明にも「天文薄明」「航海薄明」「市民薄明」と空の明るさごとに段階があります。山岳地帯のように空が広く見える場所で見上げていると、薄明の変化と1時間に15度動く星座たちから、球体である地球が猛スピードで西から東に向かって自転していることがリアルにイメージ出来ます。

「宇宙・ヒマラヤ」、最高の組み合わせです。BCを出発して2日目、雲海も美しい見事な朝焼け。雲海も日によって発生する高度が異なり、今朝はBCとC1間で雲が広がっています。


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朝焼けは悪天になりやすい傾向にありますが、ザックを整えてテントから出る頃には、いいお天気に。


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今日はC2に滞在することなく、標高差1,000mを登り切り、暗くなる前にC3まで到着する予定です。時間配分から、正午前にはアイスフォールを通過するペースです。


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先日の降雪で、マナスル峰全体が、やわらかくてやさしそうな表情に。しかし、ヒドンクレバスや滑落、雪崩の危険性が高まっていることを意味する、実はとても怖くて恐ろしい表情です。


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高所順応の期間中では、経験していない積雪量です。それによる疲労度も見当がつきません。BCで感じたC2を飛ばしてC3に向かうプランに対して「上等!」と思った「威勢」は「不安」に上書きされ、やや弱気、トーンダウンになっている心境が占めています。


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しかし、鼓舞させる必要などありません。「ガチャ、ガチャ」「カチッ、カチッ」と登攀装備をハーネスに装着させる金属音を聞きながら仲間と雑談しているうちに、再びチーム全体に力強い活気が浸透してゆきます。


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登山隊としてチームで行動する醍醐味です。ヘルメットを顎に固定させる最後の「キチッ」の音で、気持ちにスイッチが入ります。各ペア、本人が見落としているかもしれないため、無意識にパートナーの装備も総チェックします。


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各隊員ザックを背負うアクションにピッケルを握るスタイルで、準備完了を知らせるスタートの合図になります。ユマールに指をかける頃には、再び「上等!」の威勢に仕上がっています。

わずか5分程度の準備時間ですが、心配、不安、恐怖、期待、興味、興奮、様々な気持ちが入り乱れながら、ザイルと結ばれる頃には、「挑戦」と「覚悟」という、ふたつの心境に落ち着きます。毎朝の儀式に近い、この5分間が一日で一番好きな時間かもしれません。


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粗く削られている印象のアイスフォールも、積雪で雰囲気が予想通り一変しています。標高が高くなれば、気温は下がりますが、アイスフォールの入口で、これから激しい運動量になるため、服装を軽装にします。


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アイスフォールに入れば、アトラクション状態。課題の連続、無我夢中です。マラソン選手も、レース中の風景は見えているだけで、景色として眺めてはいないことが分かります。しかし、ここは二度も来られない峰。ここを登るのは最後と思うと、呼吸の苦しさで下を向いている場合ではありません。


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マラソンで苦しくなれば、足を止めた瞬間から平地の濃い酸素のおかげで、すぐ楽になります。高所の薄い酸素の環境では、足を止めても苦しい状態が長く続きます。


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頑張りすぎた行動のダメージにタイムラグがあるため、呼吸が追いつかなくなると、意識が何度も飛びそうになります。撮影する余裕がなければ、見たこと全て脳に記憶しておこうと、忘れないように思い出を記憶するのも必死、無我夢中です(笑)。

ヒマラヤ・世界第8位高峰マナスル峰(8,163m)遠征 vol.16