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自転車の旅 ナミビア編 vol.4 〜砂漠の生きもの〜【アンバサダー ロウ 麻友&エリオット】

「村」らしき村が両手で数えられるくらい、人が暮らすのに適さない広大な砂漠地帯、南部ナミビア。それだけ人がいないとなると、テントはどこでも張り放題です。

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ロウ 麻友 & エリオット (ろう・まゆ & えりおっと)
自転車旅人 + デザイナー。2009年ロンドンで出会い、結婚後は南アフリカ共和国へ移住。2015年より3年間、南アフリカ〜イギリス〜日本への道のりを自転車でミニマルに旅する。現在は国内外の未開地を探求しながら、サスティナブルな生き方を実践中。
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自転車の旅 ナミビア編 vol.4 〜砂漠の生きもの〜【アンバサダー ロウ 麻友&エリオット】

「村」らしき村が両手で数えられるくらい、人が暮らすのに適さない広大な砂漠地帯、南部ナミビア。それだけ人がいないとなると、テントはどこでも張り放題です。


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しかし人が住んでいないからといって、他の生き物もめったに存在しないかというと決してそうではありません。今回は、南部ナミビアの道中で出くわした魅惑の生き物たちの一部を紹介したいと思います。


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野宿をした翌朝、テントから出るときまず最初に必ずすることがあります。それは「トレッキングシューズの中身チェック」です。南アフリカ在住中から癖になったこの仕草は、靴のなかに潜んでいるかもしれない「虫」を外へ追い出す行為なのです。靴のかかとをトントンと地面に叩いて、中に小さな住人がいないか確認します。


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虫といっても普段どこにでもいる一般的な虫ではなく、私たちが怖れているのはサソリやヒヨケ虫です。写真のクモとサソリの中間のような見た目のヒヨケ虫は、その名のとおり日当たりのない場所を好む習性があります。

サソリのような毒は持ってはいませんが、その素早い動きとハサミのような鋏角、そして本能的に身震いするような姿に興味を惹きつけられつつも怖気づいてしまいます。こんな生き物が靴の中から飛び出してくるかもしれない…。そんな緊張感を感じながら、朝を迎えます。


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自転車を漕ぎ出すと、道中ではオリックスやスプリングボックのようなウシ科の動物、イボイノシシ、ダチョウ、カラフルな野鳥をよく見かけるのと同時に、生き物の姿形は見えなくてもその痕跡を見つけることができます。

砂漠の平坦な地形のなかで突出する、高さ数メートルにも及ぶ小屋のような赤茶色の造形物は、シロアリの巣です。たった数ミリの極小の生き物が力を合わせ、こんなにも大きな巣を作ることができるなんて。いったいどれほどの時間を要するのか、不思議でなりませんでした。


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また、道脇の木に巨大な何かがぶら下がっているのが見えそばに近寄ってみると、甲高い無数の鳴き声が聞こえてきました。よく見るといくつもの穴が下向きに空いており、姿は見えずとも小鳥の巣だということが分かりました。

そのあまりの大きさに圧巻され、しばらく巣を下から覗いていたのですが、後から地元の人に聞いたところによると、ヘビが小鳥を食べるために巣に忍んでいることがあるため、巣の下にいるとヘビが落ちてくることがあるとのこと。知らぬが仏、とはこのことです。


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その時はまだヘビの脅威に対して鈍感だったのですが、ある出来事を境に、ヘビの存在がとても身近になりました。いつものように砂のオフロードを軽快に漕いでいると、突然後ろにいたエリオットが「パフアダー!!」と大声で叫んだのです。すぐに自転車を止め振り返ってよく目を凝らすと、そこには砂の色に完全にカモフラージュされた長さ1m以上のヘビが静かに横たわっていました。


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パフアダーは南部アフリカで致死率がもっとも高いと言われる毒ヘビで、その理由はこのヘビの特性にあります。多くのヘビは、危険を察知すると体を動かし威嚇をしますが、パフアダーは敵が触れるその瞬間までじっと動かず、最短距離に近づいたと同時に相手に噛み付くといいます。

この特性のおかげで私はヘビの存在にまったく気付かず、わずか10cm横を自転車で通り過ぎたらしいのです!そこは周りに誰ひとりいない、近くの村まで100km近くある砂漠のど真ん中。噛まれたら24時間以内に病院で処置してもらわなければ命に関わるという毒ヘビの威力に、じわっと冷や汗をかいたのでした。


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アフリカというと、ライオンやバッファローなどの大型野生動物の危険性を思い浮かべることが多いかもしれません。しかし実際は、マラリア蚊やマダニのように身体に致命的な影響を与える小さな虫や、見えづらい日陰や風景に溶け込む危機感を持つべき生き物が数多く生息しています。気を抜けない多種多様な生き物が身近に存在してこそ、本来の「自然」なのだと、ナミビアの大地は教えてくれました。