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わたしのロードマップ Vol. 4 小林百合子(編集者)

ロードマップとは道すじを示す道路地図のこと。広くは“目的地・成功に導いてくれるもの”という意味もあります。旅と生き方、その双方が輝く女性たちの鞄の中身を見せてもらい、彼女たちの魅力の理由を探る連載です。

第4回目は、山岳や自然、動物、旅にまつわる雑誌や書籍の編集を多く手がける編集者の小林百合子さんに、仕事やプライベートで国内外を旅する際に持っていくお供や旅の楽しみ方について伺います。

photo MOEKO ABE
text TRANSIT

インドア派から、アウトドアも楽しむアクティブ派へ

山を中心としたアウトドア系の編集者として活躍する小林さんは、「山も街も妥協しないで両取りする」独特のスタイルで旅を楽しんでいます。現在はアウトドアでの行動も難なくこなす小林さんですが、意外なことにかつてはインドア派だったそう。
「学生時代から旅自体は大好きでした。ただ、その頃はパリやロンドンといったヨーロッパのおしゃれな街を中心に旅していて、山登りやテント泊といったアウトドアなことには興味がなかったんです」
そんな小林さんは、就職や転職をするうちに、山へ分け入り本格的な登山までこなすアウトドア派へ変化していきます。

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新卒採用で入社したTV番組の製作会社で、野生動物や環境問題を扱う番組をつくる部署に配属されたことが、今の小林さんのスタイルをつくるきっかけになりました。希望とは異なる部署で、はじめは苦痛に感じていましたが、重い機材を抱えて森に分け入り、奥多摩でツキノワグマの生態に迫る番組をつくるという生活をつづけるうちにやりがいを感じはじめます。その熱中ぶりは、部署異動が通告されたとき、もっとクマの生態を知りたいと仕事を辞めてアラスカの大学で学ぶことを決めてしまったほど。そのアラスカでアウトドアの魅力に出合うこととなります。
「お金がなかったので、半年ほど知人宅の庭にテントを張って生活していたんです。大学のアドベンチャーサークルにも入って、デナリ国立公園ではじめて本格的なキャンプをしたりと、自然にアウトドアな環境に慣れていきました。慣れるというよりむしろ楽しみを覚えたくらいですね」

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アラスカですっかりアウトドアへの抵抗がなくなった小林さんは、山岳図書専門の出版社に入社。これが今の活躍につながっていくのです。
「動物図鑑や自然関連の書籍を扱う出版社の編集者として入社したのですが、本格的にアウトドアをする雑誌の編集部に配属されてしまったんです。そこでの仕事が今につながっています。TV番組制作会社と同じで、たまたまですね」
アウトドアに抵抗はなくなっていたが、山登りの過酷さはまったく別。厳しい山登りの途中で安らげる山小屋がオアシスのように感じ、いつしかその山小屋に惹かれるようになっていきます。「山小屋のもつ独特の温かな雰囲気を味わいたくて、山登りをするようになりました。本末転倒ですが(笑)。それでも、つらい山登りとその道中にある山小屋である意味開放されるような経験があったからこそ、今のように山と街を両取りするスタイルに巡り会えたのだと思います」

厳選アイテムをパズルのようにパッキング

小林さんの特徴的な旅スタイルの肝となるのが、荷造りです。2週間の旅道具を収めた< clamshell 80 >には、計算しつくしたように荷物がぴったりと組み合わさっていました。スーツケースの外側には、40Lのバッグパック< ridge 40 type1 (Limited Model) >まで収納されています。見事なパッキングによって、収められた荷物はとても2週間分になるとは思えない量です。しかも、山と街のどちらも楽しむというのだから驚いてしまいます。

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「限られた持ち物で向かう旅先で、山と街という両極にあるふたつの要素を楽しむには、兼用できるアイテムをうまく選ぶことが重要です。アウトドアで使えるものを中心にしながらも色や形に気を配り、街で使っても馴染むようなアイテム選びをしています。コツは、黒などダークトーンのもので統一していくことですね」
街歩きで身につけることの多いワンピースやサンダルも黒を中心に選ぶことで、自然とシックな装いにまとめられ、さまざまな場面に対応できるそうです。

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アイテム選びの象徴的なものとして取り出してくれたのが、トレイルランニング用のシューズ。
「一般的なトレラン用のシューズはビビッドな色のものが多いんです。そのなかで、この靴は、街中で履いていても違和感がないし、トレラン用につくられているので本格的な山登りでも不安なく履くことができる。こういうアイテムを見つけることで、わたしの旅のスタイルが実現できています」

身だしなみを整えることで心に余裕を生む

女性の旅に欠かせないのがコスメ。小林さんは、こちらも兼用できるアイテムを中心に揃えていました。たとえばリップグロスは、ドレスアップするときのグロスとしてはもちろん、薄塗りすれば保湿用リップとしても使えるものを、オーガニックオイルだけでつくられたヘアワックスも唇が荒れたときや体を保湿したいときにも使えるものを選んでいます。こうしたアイテムを日常的に厳選して使うことで、旅先に持っていくときも荷物を減らせ、それでいて普段と変わらない豊かな旅を実現できているそう。アイテム選びでもうひとつ重視していることは、香りだといいます。
「山でお風呂に入れないことが多いので、香りはとても重要なんです。ユリの香りのする化粧水は、肌にのせるとふわっと香りが広がって幸せな気分になります。せっかく自然の中に身を置くのですから、基本的にはケミカルでないものを選ぶことも心がけていますね」

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ノンケミカルを中心にしながらも、アウトドアで活動する小林さんは、日焼け止めや虫除けだけは、出かける先々でその土地の気候に合ったものを揃えているそう。
「屋外での活動では、ノンケミカルだけでは対応しきれない部分がどうしてもでてきてしまうんです。我慢しすぎると旅全体が苦しくなってしまうので、いいところ取りをしています」
こうした柔軟性のある考え方が、妥協せず、自然体でやりたいことを追求する小林さんの旅のスタイルを生み出しているのかもしれません。

鞄はパンパンでもつい購入してしまうモノたち

厳選したアイテムを詰め込んだ小林さんの鞄は常にパンパンで、旅の思い出を持ち帰るのはなかなか難しいようですが、それでも購入してしまうのが、水筒やボトルだそう。
「トレイルの途中にあるショップで売られているボトルは、地名や名所がその土地らしくデザインされている、その場所でしか手に入らないもの。そこだけ、となるとつい手にしてしまって、今ではボウリングができるくらい沢山のボトルが家にあります(笑)。他にも、地図やガイドブックは仕事に関係することもあって購入しています。こういう何気ないものがあとあと旅の思い出になるんですよね」

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これはアメリカで偶然迷い込んだゴーストタウンを抜けた先のダイナーで購入した、その名も「ゴーストタウンマップ」、これはアラスカのショップで購入したボトルで……と、思い出話がつきない小林さん。言葉通り、一つひとつの何気ないアイテムにも入手したときの思い出が色濃く焼き付いているようです。

山も街を両取りする欲張り旅を広めたい

町で食や文化を楽しむ旅と、山に分け入るアウトドアの旅。「これまでの経験と知恵がついたからこそ到達した形」と語るその旅のスタイルをこれからは、多くの人にすすめていきたいそう。
「観光やショッピングも楽しみたいし、自然のなかでリラックスすることもできる。そういう旅のスタイルは大人ならではの楽しみ方だと思うんです。まずは日本国内で高原などのペンションに泊まり、翌日山に日帰りで登って、再び街の周辺でのんびり過ごすというようなところから体験してみてほしいですね」
こうした旅の提案として『山と高原』(パイ・インターナショナル)という共著も近々刊行予定。旅のスタイルだけでなく、仕事でも小林さんのやりたいことを、つぎつぎと実現していっているようです。
ぎゅうぎゅうになった鞄には、学生時代からの旅の経験と、働き出してからしたアウトドアの魅力という、人生経験を積みながら生み出した、いいとこ取りの旅のスタイルが詰まっていました。


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旅の持ち物

ガイドブックや地図/行った先で見つけたパンフレットやガイドブック。いいなと思ったものはどんどん鞄に詰め込んでいくので、帰りにはかなりの量になることも。
バッグパック/40Lのバッグパックを携行。街も山も楽しむスタイルにするため、大きなバッグパックもなんとかスーツケースに収めている。
テントや鍋などのキャンプ道具/山に入るときは自炊がメイン。他の道具と合わせバッグパックに収まるように、キャンプ道具はコンパクトで軽量な機能的なものを使用する。
小分けの袋/着替えやコスメ、薬などの救急用品など荷物はすべて小分けの袋に入れて収納。こうすることで、街のホテルから山へ入るための荷造りも、袋ごと入れ替えるだけで簡単。
ランジェリーバッグ/見てすぐ用途がわかる下着のイラスト入りでお気に入り。「機能的なものばかり詰め込んでいるなかで、こういうちょっとしたところで女心を忘れないようにしています」
ボトル/旅先で購入したもの。「アウトドア系のボトルは色やデザインがかわいいものが多く、その土地でしか手に入らないと思うと思わず購入してしまいます」

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今回のおすすめアイテム

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[ クラムシェル 80 ]

前面に大きなジップが付いていて、ハマグリ(=Clamshell)を思わせるデザインのソフトタイプのキャリーケース。メインジッパーから左右に展開できてパッキングも簡単。大きくジップを開閉しなくても、フロントジップから容易に中の荷物を確認することも可能。

ポイント

  • フロント部分のジップを開ければ、メイン気室に簡単にアクセスできる
  • 中にオーガナイザーがついていて、小物の整理も自在
  • ボディの上部には小さなポケットがあって、取り出し頻度の高い荷物を入れるのに便利
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ridge 40 type1 (Limited Model)

[ リッジ 40 タイプ1 (リミテッドモデル) ]

小屋泊やテント泊にも対応する中型バッグパック。メインコンパートメント内の荷物の整理にも便利な2気室構造を採用。ハーネス、ヒップベルト、背面デザインを改良することでフィット感を向上させている。新素材採用にともなう軽量化と相まって、荷物が軽く感じられる。

ポイント

  • カリマー独自の高耐久軽量ファブリック〈silvaguard〉を採用
  • レインカバー内蔵で雨がちな地域も安心
  • 荷物が軽く感じられる抜群のフィット感を実現

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小林百合子(こばやし・ゆりこ)

1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人からなる山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、共著に『山と山小屋』(平凡社)、『山小屋の灯』(山と溪谷社)がある。