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フィールドレポート 横浜・野島海岸(後編)【アンバサダー 谷口京】

横浜市に残る最後の自然海岸・野島海岸。そのビーチで行われた海岸清掃に参加しました。

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谷口 京(たにぐち・けい)
写真家。1997年 日本大学芸術学部写真学科卒業。宮本敬文氏に師事後、NY市ブルックリンを拠点に独立。仕事の傍ら世界各地を巡り、2004年に帰国。雑誌や広告、カタログなど様々なフィールドで活動中。
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フィールドレポート 横浜・野島海岸(後編)【アンバサダー 谷口京】

横浜市に残る最後の自然海岸・野島海岸。そのビーチで行われた海岸清掃に参加しました。


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穏やかな春の週末。横浜市金沢区にある野島海岸のビーチクリーンに参加しました。この活動は横浜の市民グループを中心に、1997年から続くイベントです。当日は地域の住民や企業有志、高校・大学生ボランティア、合わせて124名が参加しました。


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100メートルに満たない小さな砂浜には、大小さまざまなゴミが打ち上げられていました。清掃開始から15分ほどでゴミ袋はずっしり。


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様々なゴミがあるなか、驚いたのがレジンペレットの存在でした(白・黄色・オレンジ色の丸い粒)。レジンペレットはプラスチック製品のもととなる、未加工の原料です。本来、自然環境にあるはずのない物質ですが、製造工場や輸送時に流出していて、いまでは世界中の浜辺で見つかっています。


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高校生ボランティアによる、レジンペレットの回収作業。砂を掬っては、ザルでふるいにかけて回収します。


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自分も探してみました。するとたった1メートル四方の砂上から掌いっぱいのペレットが…。


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近年、レジンペレットやマイクロプラスチック(紫外線や波の力で小さくなった直径5ミリ以下のプラスチック)による海洋汚染が、地球温暖化と並ぶ地球規模の環境問題として取り沙汰されるようになりました。マイクロプラスチックはPCBやDDTなど海中の有害な化学物質をスポンジのように吸収する性質があり、それらを魚や海鳥などの生き物がエサと間違えて飲み込み、有害物質を体内に取り込んでしまうのです。やがては生き物の生態系に影響を及ぼし、食物連鎖の頂点に立つ人間にも関わる喫緊の問題です。


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集めたゴミの分類作業。その内訳は
プラスチック片 210,000粒
タバコ吸殻・フィルター 1350本
ペットボトル 13本
飲料ボトルキャップ 140個
プラスチック袋 1,009袋
ガラスや陶器片 449個
ストロー・マドラー 44本
注射器 9本
など合計90.4キログラム(「海をつくる会」事務局からデータを頂きました)。東京湾の片隅の小さな浜辺に、これだけのゴミが流れ着く事実を目の当たりにし、非常にショックを受けました。なお、今回集められたゴミのデータは、アメリカの環境団体 Ocean Conservancy に送られ、世界の海洋保全の基礎データとして役立てられるとのことでした。


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写真:野島海岸周辺のアマモ場は、海の生き物の貴重な産卵場。

1950年代以来、プラスチックの生産量は爆発的に増えました。2016年、1年間に製造されるプラスチックの量は3億2200万トンに達しました(参照リンク*1:Plastic Europe)。そのうち年間約800万トンが海に流出しているといわれます。


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写真:エサをついばむマメコブシガニ(野島海岸にて)

近年、小魚や甲殻類のエサである動物プランクトンも、マイクロプラスチックをエサと間違えて捕食していることが明らかになりました。2016年には東京農工大の研究チームが、東京湾のカタクチイワシの体内からマイクロプラスチックが見つかったと発表しています。煮干しの原料であるカタクチイワシ64匹を調べたところ、その8割にあたる49匹の消化器から、合計150粒のプラスチックが見つかったというのです(参照リンク*2:NATURE)。


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写真:夜明けの東京湾。江戸前アナゴをはじめ、横浜の海は豊かな漁場

プラスチックの海ゴミが、環境にどのような影響を及ぼすかの研究はまだ始まったばかり。しかし、マイクロプラスチックが含む汚染物質が食物連鎖で濃縮され、巡り巡って、やがて私たちの口に入るのは明らかでしょう。


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写真:横浜・海の公園での遠足風景。右端の丘が野島。

安価で加工しやすく、大量生産可能なプラスチックは、私たちの暮らしに不可欠な素材です。しかしその安易な消費活動が、地球環境と子ども達の未来に深刻な影響を及ぼしうることを、私たちは真剣に考え、一歩を踏み出す時がきています。清掃ボランティアへの参加は、海洋汚染と未来について考えるきっかけを与えてくれたのでした。

参照リンク*1: Plastic Europe
参照リンク*2: NATURE