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+Karrimor vol.15 台湾/写真家・山西崇文

世界中を旅し、その地に暮らす人たちとの出会いをシャッターに収めている写真家・山西崇文さん。雑誌や個展などで作品を発表していますが、今年は「とろとろトロピカル ある旅の記録と記憶」(全5巻、ダイヤモンド社刊)を電子書籍にて刊行するなど、活動は多岐にわたります。そんな山西さんが訪れたのは台湾。一年に二度 開催される、ランタンフェスティバルの様子をお届けします。

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飛行機を一歩出た途端、こってりとした熱気が体が包みます。早朝7:10に羽田を発った飛行機は3時間ほどで、台北松山空港に到着。今日は9月23日、台湾では中秋節と呼ばれる日本でいう十五夜。日本ではどちらかといえば軽いイベントですが、こちらでは祝日にもなっていて、家族と満月を見ながら過ごす大切な日です。

今回の旅の目的は、台北市をドーナツ状に囲む新北市の名所を訪ね歩き、クライマックスは中秋節の大イベント、平溪スカイランタンフェスティバルに参加します。

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今回のお供は〈tribute 25〉〈clamshell 40〉。海外への取材旅行では、どんなバッグで出かけるかは毎回悩みの種。出来ればカメラ機材を預け荷物にはしたくないもの。その点、〈clamshell 40〉は、機内持ち込み可能なサイズで助かります。二枚貝のように左右にカパっと開く構造も荷物を仕分けたり、一目で必要なものがどこに入っているか探しやすいのも高ポイントです。

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好みのオリーブカラーがラインナップされているのも◎。今回は〈tribute 25〉ともお揃いで、カラーコディネートもバッチリです。あと、ちょっとしたことですが、ファスナーに鍵を通す穴があるもの大切なポイント。空港以外にも大事な機材を宿に置いて外出するときなど、きっちり施錠できるのは大きな安心につながります。

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〈tribute 25〉は、街歩きやトレッキングに手頃なサイズながら、ポケットが機能的にデザインされていて見た目以上の収納力が魅力的なバックバック。小型の三脚やいざという時に羽織れるパーカーなど、なんでも放り込んで気軽に使えるのがいいですね。
カメラ機材用のバックパックタイプだと、作りがタフ過ぎて必要以上に重く、かえって取り回しにくいこともありますが、〈tribute 25〉はシンプルで軽く、機材はソフトケースなどに入れて放り込んでおけば大丈夫。旅の気軽さを損なうことなく行動できます。

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空港で今回の旅をアテンドしてくれるライさんと合流し、早速向かったのは淡水。車で1時間ほど、淡水河の河口に位置し、台湾八景の一つにも数えられるほどの風光明媚な場所だとか。しかしまず飛び込んで来たのは、観光客や地元の人々で賑う喧騒と活気に満ちた淡水老街でした。

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阿給(春雨入り油揚げ)、魚丸(魚のすり身団子)、魚酥(魚スナック)、古早味現烤蛋糕(昔ながらの焼きたてケーキ)、阿婆鉄蛋(乾燥味付け卵)など、ご当地人気グルメの店を冷やかしつつ、まずは気ままに散策。今朝、日本を発ったばかりなのに、早くも台湾の風情に包まれます。

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グルメをつまみながら小道へと入っていくと、喧騒がぐっと遠のき街の表情ががらっと変わります。この辺りは重建街と呼ばれ、200年もの歴史をその静けさの中に刻んでいます。大きなお寺や古い教会、大胆にグラフィティの描かれた階段、再築されるという日本統治時代の建物、古民家をリノベーションした洒落た店も混ざって、通り過ぎていった時代が良き記憶としてあちこちに留まり、この街の今を形作っています。
ガイドの男性が懐かしい小道で一節歌ってくれた歌は、60年代のヒットソング。彼が立つその道は「戀愛巷(恋愛小道)」と呼ばれ、有名な作家の恋愛物語に由来する場所なんだとか。いくつもの物語が何気ない裏路地に味わいを添えています。

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風光明媚な淡水がもっとも魅力的に映えるのは、何と言っても夕暮れ時。絶景を求めて、漁人碼頭のランドマーク『情人橋』へと向かいます。ここもまた喧騒に包まれていました。美しい夕陽をカメラに収めようと、三脚を手にした気合の入った人も大勢います。

それでも、日本の観光地のような、うんざりするほどの人混みというわけではなく、楽しく華やいだ気分に浸れる丁度いい塩梅の賑わい。楽しげな声が橋を包み、それを夕暮れ迫る夜の帳が徐々に飲み込んで、まさにクライマックス!あとは晩御飯に思いを馳せるだけの気楽な自由がなんとも楽しい気分させてくれます。

この橋自体も大変美しく、サンフランシスコの吊り橋をモチーフに、まるで大きな帆を張ったような優雅なもの。とはいえ、当然ながらこの橋から夕陽を眺めていては、この橋の美しさ全体を楽しむことは出来ませんが…。

絶景ポイントが複数存在する名所とは、なんとも悩ましいもの。夕暮れ時という一日のハイライトをどこで過ごすか、それはいつも大問題だけれど、解決方法はひとつしかないですね。そう、もう一度やってくること。淡水の魅力は一日では満喫しきれない奥深いもの。大自然と人間の営みが形造ってきた歴史とが溶け合う淡水は、来るたびに違う顔を見せてくれるはずです。

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さぁ、夜の帳が降りてしまえば、お楽しみはただ一つ。永和区に場所を移し、永和楽華夜市へと突入です。いや、突撃と言うべきか。車でやってきましたが、電車ならMRT「頂渓」駅から歩いて15分ほどです。

夜市のゲートをくぐると露店が連なるお馴染みの光景がずっと続いています。奥が深そうでいかにもワクワクする景色です。何処に目をやっていいやら、「一軒も漏らさず見てやろう!」そんな気負いが体に充満しているのが自分でも可笑しいほど。

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しかし、ライさんはささっと裏道へ。いきなりの通(ツウ)な案内に意表を突かれましたが、そこには夜市の喧騒などどこ吹く風の牛肉スープ屋がポツンと灯りをともしていました。これも夜市なのかなと、戸惑いつつ席に着くと、50歳のときに思い切ってこの店を始めたという老齢のご主人が、自慢の牛肉汁をよそってくれました。

巷に溢れる過剰な味に慣れてしまった舌には、一口目のインパクトは極薄だけれど、飲むほどに深い味わいの染み出すような逸品。滋味に溢れる地味な逸品!スープは無添加、牛肉はニュージーランドで買い付けるというこだわりよう。こんな裏路地でこんなグルメに出会えるとは。

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名刺代わりの一杯を楽しんで、メインの通りへと繰り出します。中秋節の食べ物である大きな柚子の皮を頭に被ったおじさんが目に飛び込んできました。ふざけてるのではなく、そういう風習なんだとか。季節ものの柚子を頭に乗せるなんて、いかにも意味ありげに見えてしまうけれど、特に意味はなくただ楽しみのためにやっていると、やや拍子抜けの説明。

なんにでも意味を求めてしまうのは旅行者の性分。でも、楽しいからやってるって、一番深い理由にも思えます。「楽しいから生きている、楽しむために生きている」、旅人としては、そんなメッセージを勝手に受け取りつつそぞろ歩くのみです。

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ここの夜市の特色はローカル色の濃さだといいます。なるほど、あたりを埋める人々は家族連れや友達、恋人同士など、バックパック姿の旅行者はあまり見かけません。夜の露店といえば、日本では祭りなど特別な日の印象がありますが、ここ台湾では必ず街の何処かで開かれています。旅の夜の特別なイベントが、地元の人々の日常の風景というのもまた旅情が増してくるように思えます。

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翌日は朝から生憎の雨。今夜はメインイベントであるスカイランタンフェスティバルの日、空を覆う分厚い雨雲に気分もどんより沈み気味ですが、案内のライさんからは心配する気配は微塵も感じられません。手配した車に乗り込み、今日もスタート!

雨の街は、それはそれで風情があっていいもの…、そんな負け惜しみを呟きながら車窓を眺めていると、スっと雨が止み前方の雲の隙間から晴れ間が。「ここでは、365日のうち200日は雨ですよ」ライさんが事もなげに、教えてくれました。

最初に訪ねたのは、菁桐。人気のローカル線、平渓線の終点です。映画のロケ地にも使われたという駅前には日本統治時代の懐かしさがあちこちから漂っています。そもそもは、日本統治時代に炭鉱で栄えた街。鉄道は石炭を輸送するために敷設されたものです。

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昨日訪れた淡水老街もそうだけれど、日本統治時代の建物を再現したり保存したりと、どうやら多くの台湾の人々には、日本統治時代は良き懐かしい時代として認識されているようです。親日国家台湾という触れ込みは、日本から訪れる僕たちにはもちろん嬉しいことだけど、何かが胸の奥に引っからなくもありません。それが本当の気持ちなのかと、つい確かめたくもなってきます。

聞けば、台湾の歴史は、日本統治時代に日本が何を行なったかも含め、ちゃんと教科書にも載っているといいます。台湾の人々の日本人への好意が本物であることを願いつつ、マイルドに台湾の人々と語り合うのも旅の醍醐味ですね。

ジブリ映画「千と千尋の神隠し」のモデルとなった街として、九份は有名だけれど、十分という街があることはこの旅で初めて知りました。次はその十分へと向かいます。

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まずは、十分瀑布へ。雨は降ったり止んだりをくり返していますが、ここでも祝日を楽しむ観光客で賑わっています。順路に従ってつり橋を渡り、お土産やの立ち並ぶ通りを抜けるとすぐに滝が姿を現します。今回は車でやってきましたが、台鉄平渓線の十分駅から徒歩で約30分程度ということなので、ローカル線の風情を味わいながらトレッキングがてらの散策も楽しそうです。

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十分瀑布はナイアガラ型の横長の滝。落差約20メートル、幅約40メートルのスケール感は、山の中で出くわすには十分な迫力。わかりやすく「台湾のナイアガラ」と呼ばれているそうです。上から覗いていると、さっと雲が晴れ、切間から射し込んだ太陽で虹が現れました。下まで降りていくと、滝壺へと落下するはしから霧状に噴霧する水が立ち込めていて、たちまち濡れてしまいます。雨が止んでも、どのみちびしょ濡れになる運命のようでした。

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すかさず、〈triton jkt〉〈pocketable rain hat〉を、背負った〈tribute 25〉から取り出します。さっと羽織れば、滝のしぶきでびしょ濡れになるのは免れられます。こんなとき以外にも、思いの外冷房がキツい南国の交通機関などで羽織るのにも〈triton jkt〉が一着あると安心ですね。
車に戻って〈pocketable rain hat〉を取ると、水滴が綺麗な玉のように付いていて、なんとも頼もしい気分にさせてくれました。流石に傘の代わりにはならないけれど、急に降り出した雨から頭や顔が濡れるのを防ぐには丁度いい気楽さです。

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思いかげずダイナミックな景色に出会った後は、十分老街へ。ここは、線路を挟んで土産屋や民家が立ち並び、その線路の上でみんな思い思いにランタンを飛ばしています。ある意味、大自然よりもダイナミックな人間の生活が醸す呑気な自由さが覆っていて、一目で楽しい気分に浸ることができます。
ランタンは特別な日にだけではなく、毎日上げてもいいんですね。スカイランタンフェスティバルでランタンを上げるには事前の登録や抽選など、条件がありますが、ここではどんな時期でも昼間から願いを込めたランタンを気軽に上げることができます。

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16時、今夜のメインイベント、スカイランタンフェスティバルの会場へと向かいます。はっきりしない天気も、いきなり覚悟を決め込んだのか土砂降りに。「え、そっち?」。ランタンに願いを込める前に、雨を止める願いのランタンを今すぐにでも飛ばしたいくらいです。それでもなぜが悲観的な雰囲気は一切なく、フェスに向けて着々と準備が進められています。

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スカイランタンフェスティバルは、もともとは台湾のお正月である元宵節に行われるイベントでしたが、去年からは中秋節にも行われるようになりました。毎回変わるという会場は、今回は中学校で。ステージでは本番に向けた最終リハが行われ、体育館では、アメリカ大使やステージで演奏したアーティストなど特別なゲストが上げる特大のランタンの準備などが行われ、教室を貸し切ったプレスルームからは随時情報が発信されていて、まさにフェスという大舞台の躍動が感じられます。雨の心配など霧散しいつの間にか本番への期待に胸が膨らんでいました。

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体育館のランタンの準備では、ランタンマイスターとも呼ばれるべき熟練の職人さんが大活躍。今回は中秋節でもあり、うさぎの形の可愛らしいランタンもありました。台湾のお月様にもうさぎが住んでいるんですね。

本番の打ち上げは100組づつ11回に分けて行い、事前に申し込んだ人々をその都度校庭に入れて、一斉に飛ばします。その100組にはそれぞれボランティアが付き、司会の合図で一斉に飛ばせるようサポートをします。

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このイベントは企業の協賛などなく、まさに地元の力で行われるイベント。それでも面白いのはお客さんはバラエティに富んでいて、台湾各地からの人もいれば、はるばる海外からの人たちもたくさんいらっしゃいます。地元発信のイベントでありながら、国際的なフェスへと大きく成長しているのです。

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18時の本番が近づくと打ち合わせたように雨は止み、校庭に入った最初の100組のみなさんは、ランタンに思い思いに願いを書き込んでいます。空に飛ぶランタンの写真や映像はよく目にしますが、実物のランタンはイメージよりもかなり大きく感じます。気づけば日が暮れて、会場には笑顔や楽しそうな声が満ちています。

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ステージでのライブが終わると、司会の女の子のMCが楽しそうに盛り上げます。この辺りはもうお祭り騒ぎそのもの。そしてランタンに火が灯ると一気に神秘的なムードに包まれます。一緒にいる人たちの顔がほのかに照らされて、なんだかいいムードに。そして全員でカウントダウン!

「3、2、1、ゼロ!」。一斉に手を離し、静かにランタンが空に浮かび上がります。

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風は少し強め。イメージよりも力強い飛翔にみなが一斉に顔を上げ、自分のランタンを目で追います。やがてみんなのランタンが一つの願いとなって天に消えていきます。「願い事が翼を付けて飛んでいく」。もらったパンフレットにあったキャッチコピー、まさにその通りの光景です。

4度目の回に僕たちの打ち上げの番がやってきました。実際にランタンの一面をメッセージで埋めるのは結構難しく、ある程度、言葉を事前に考えておかないと戸惑ってしまいます。その上、火を点火したランタンはかなり熱く、カウントダウンの間中持っているのもコツが必要です。

それでもあっという間に打ち上げの瞬間はやってきます。チームで息を揃えないとランタンが傾いて真っ直ぐ上に上がっていかないので、要注意です。そして、手を離したランタンを見送る気分のなんとも言えない切なさが新鮮でした。「そうか、爽快感じゃなくてほんのり切ないんだ…」でもいい気分ですね、とっても。

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何度か打ち上げを見ていて、腑に落ちたことがありました。それは、大切な人たちとここにやってきて同時に空を見上げる、もっと単純に言うと、上を向く。そんなシンプルなことがとっても胸を打つんじゃないだろうかと。

この校庭に、下を向いてる人はいません。みなキラキラした顔で天を仰いでいる。希望や未来は地べたにではなく、きっと天にあるばすだから……。

昔々、故郷を遠く離れて戦う兵士が、家族へ無事を知らせる合図として飛ばしたのがランタンの始まりと聞きました。ランタンの形は諸葛孔明の帽子とも言われています。そんな由来や意味、このイベントの背景成り立ちを懸命にメモっていましたが、「みんなで上を向くっていいもんだな」、その単純な幸福感のなかで、それはもうどうでもよくなっていました。

顔を上げて上を向けば幸せになれる、それが大好きな人たちとなら必ず。
そんなランタンからのメッセージを、この夜の僕は確かに受け取ったのです。

今度は大切な人と一緒に来よう、そのいつの日かを思ってまた楽しい気分が込み上げてきました。