近年、積雪不足に悩む雪山シーズン初め。そんな時に最適なスポットがここ、中央アルプス・木曽駒ケ岳(2,956m)。バスとロープウェイで一気に標高2,610mへ。“雲上の楽園”と呼ばれる千畳敷カールは、やっぱり圧巻!

ロープウェイの中から、横一面に並ぶ南アルプスと背後の富士山に見惚れていると、アッという間にダイナミックなロケーションが目の前に広がる世界に到着。コートを着た観光客も、厳つい装備をまとった登山者も、誰もが歓声を上げる瞬間です。

前夜の悪天がもたらした、キラキラの樹氷の世界。穏やかな夜空から一夜明けると、すっかり氷が融け、翌日は茶色い木々に戻っていました。

初日は、雪山の感覚を思い出すために、千畳敷カール周辺で足慣らし。陽ざしの陰りと共に冷えていく指先の感覚やレイヤリング(手袋やウエア)の重要性を再確認。

一夜明け、朝食前の御来光。雲上に浮かぶ山並みと刻々と変化する空の色が美しく、「景色を観るためだけに滞在する贅沢もいいな」と思えるひと時でした。

目の前には、白銀のカール。急な八丁坂には、アイゼンの爪を引っかけそうな金網や階段、岩の障害物が多々ありますが、そそり立つ宝剣岳と青空を見上げながら登る山岳風景にテンションも上がります。オットセイ岩を過ぎれば、急登はもう少し。

乗越浄土まで上がると景色と風が一変! 稜線上の絶景と達成感に満たされる中、しっかりエネルギー補給。脇下のベンチレーションのファスナーを閉め、冷たい西風とアイスバーンの路面に注意しながらさらに進みます。

遮るものの無い稜線では、バラクラバ(目出し帽)とサングラス、上着のフード等、風の状況に応じて調整します。冷たい西風と頬に当たる細かい氷の痛み、時々吹く突風に耐えながら前進する感覚は、雪山ならでは。

好条件に恵まれれば、今回の様に気軽に登れる3,000m級の山ですが、雲行きが怪しくなると数分でホワイトアウトや強風に見舞われる危険な領域です。

山頂からは、空木岳や御嶽山、北アルプスや八ヶ岳連峰の大パノラマ。南アルプスの背後から、控えめに頭を覗かせていた富士山も、より存在感を増しています。風に立ち向かいながら、登った甲斐があったと実感する瞬間でした。

下山時は、登って来る人とのすれ違いに気を配り、往路以上の緊張感。

心地よい眠りへ誘うバスの揺れと窓越しの陽ざし。うたた寝から目覚めた後は、下山後の楽しみにしていた名物ランチへ直行! 柔らかいヒレ肉の美味しさが冷えた身体に染みわたり、何とも言えない幸福感に満たされました。