本州では、八ヶ岳の横岳か北アルプスの白馬岳にしか自生していない花。
梅雨の晴れ間にしか開花しない貴重なツクモグサを求めて、静かな尾根を散策してきました。

緑が深い杣添(そまぞえ)尾根。ハイマツ帯に変わるまでは、展望のない原生林をひたすら直登します。深い呼吸と適度な湿度、木立の間を吹き抜ける風に細胞が生まれ変わるような感覚。長い自粛期間があったからこそ味わえる自然の魅力を再認識しました。

ガスに覆われた展望台を過ぎると、フカフカの土と根っこのミックス。低木が刈り取られた急傾斜の尾根は、体力を要します。

ハイマツの海から稜線上の三叉峰が見えて来る頃、徐々に足元を彩る高山植物が現れました。
霧雨で艶を帯びたキバナシャクナゲやイワカガミが綺麗でした。

チョウノスケソウと同じくらい見頃を迎えていたオヤマノエンドウ。

ミストからシャワーに変わった雨の稜線。鋭い岩峰群や遠方の絶景は望めませんでしたが、山頂付近は、高山植物を楽しむ人々で賑わっていました。

足元や岩の間に咲いている健気な姿が何とも微笑ましい。見頃を迎えたオヤマノエンドウやチョウノスケソウ、ハクサンイチゲやキバナシャクナゲ、イワウメやイワヒゲ、ミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ。これからの成長が楽しみなウルップソウやイワベンケイなどなど、横岳周辺は、まさに高山植物の宝庫。

肉厚な葉が密集しているイワベンケイ。黄色い花が咲く前の姿は野菜のよう。

稜線上は、ずーっと霧雨の中。景色がなくても、時間を忘れて急峻な場所に咲く高山植物を探し続けてしまう岩稜歩きは楽しいですね。

霧や雨の日には開いた姿が見られないツクモグサは、やっぱり開いていませんでした。

赤岳天望荘で一休み。日帰りでなかったら、ゆっくり寄り道したくなる山小屋です。

八ヶ岳第二位の高峰(2,830m)にダイレクトに登れる花と展望の横岳。またいつか、梅雨晴れの日にリベンジしたいと思った一日でした。