涼と絶景を求めて、壮大な北アルプスへ行ってきました。

登山口へ向かうタクシーを待つ間、前方には、これから向かう白馬三山(白馬鑓ヶ岳・杓子岳・白馬岳)の神々しい姿が見えていました。数時間後、山麓で見上げる世界いると思うだけでワクワクします。落石事故が無いことを祈りつつ、迎えのタクシーに乗り込みました。

日々雪解けが進む大雪渓。しばらくは、激しい水の音が響く大きなクレバス(雪の割れ目)を横目にゴロゴロの岩場を登ります。つい先ほどまで、湿気ムンムンの森を歩いていたことを忘れてしまうくらいの冷風が吹く雪渓に一瞬で心が洗われました。

時には、こんな岩も滑り落ちてくる大雪渓。渓谷の両側や上部からは自然崩落や音もなく滑り落ちる落石の危険が常にあり、濃霧に包まれているときに落ちてきたらと思うとゾッとします。
3日分の装備を詰め込んだ〈ultimate 60〉は、雪渓の急傾斜でも肩にずっしりくることなく安定感もあり、大きさのわりには思いのほか快適でした。

軽アイゼンを外してからは、雪上よりも更にきつく歩きにくい勾配が続きます。振り返ると眼下には山麓の町。見上げれば、まだまだ続く急勾配。疲労がピークに達している仲間もいましたが、断続的に吹き降りる怪しい風と霧の中、可憐なお花畑と青空を励みに頑張りました。

杓子岳を見上げながら、しばしの休憩。重いリュックサックを降ろし、背中にこもった熱気を放出中。汗でベタついた肌でも脱ぎ着がしやすく、軽量・速乾性に優れている〈boulder PD S/S〉は、私の中で今年一番活躍している一枚。太陽の紫外線を浴びると、バックプリントが白からブルーに変わるところもお気に入り。

初日の滞在先である白馬岳頂上宿舎のキャンプ場は、新型コロナの影響によりテントも事前予約制。例年よりテントの数が少なく一見穏やかに見えますが、テント設営から翌朝の撤収まで、常に音を立てた風が巻いていました。

翌朝は、残念ながら霧雨と風にあおられ杓子岳と白馬岳へ。白馬鑓ヶ岳を断念して、次のキャンプ地へ向かいます。

三国境へ下る途中からガスが取れると突然、前方に小蓮華山と青空、富山側には壮大な雪倉岳の重鎮が。予期せぬ好天に思わず歓喜の声が上がりました。

本日のキャンプ地、白馬大池の青い水面が眼下に見えてきました。例年と違いテントも事前予約制のため、急ぐことなく絶景散歩が楽しめる贅沢な下り坂。山の中に浮かぶ青さは、やっぱり美しい!

昨夜の強風テント泊とは一変し、カラッとした穏やかなキャンプ地。シュラフやテント、湿った装備を乾かしてホッと一息つく至福の時間でした。

夕食後、早々に眠るなんてもったいない。予想以上に天気が良くなった夕方、いつもなら通過するだけの池の畔をゆっくり堪能しました。

心身共にリラックスできた翌朝は、残雪、巨岩、湿原の木道歩き、と変化に富んだコースを下山。下ってきた道を時々振り返りながら、余韻に浸る素敵な朝でした。

白馬三山から眺める後立山連峰のダイナミックな景色はお預けとなりましたが、涼しい大雪渓、強風下でのテント泊、稜線から広がる縦走路と可憐な高山植物から沢山の感動をもらった3日間でした。