海沿いの道を車で1時間ほど走ると、やがて小さな港に到着した。岬を周遊する崖沿いのトレイルを歩くようだ。ultimate60の中から丸めて収納していたultimate35を取り出し、背面パッドをultimate60から移し変える。最低限の荷物だけ詰め込むと、軽さと強度を兼ね備えたアタックザックの完成だ。
道は狭く、すぐに急な登りとなった。ジョーダンは拾った枝を杖にして、鼻歌を歌いながらすいすいと斜面を登っていく。後ろを振り返ると、ロブは息を切らしながら必死で後をついてきていた。こちらと目が合うと、親指を立てて強がって笑ってみせるのがおかしかった。ようやく急勾配の斜面を登りきると、ハイマツが広がるなだらかな稜線に出た。黒くゴツゴツとした海岸線はマグマが冷えて固まったものだそうだ。眼下にはコバルトブルーの海が広がる。雲間から光が射して、水面に雲の影を映してまだら模様に輝いていた。
「トゥインクリーな海だね」
ジョーダンはそう言うと、こちらを見て微笑んだ。 しばらく稜線を歩き、来た道とは別の道をロープを使って慎重に降りると、小さな入江に到着した。流木をベンチにしてここでランチをとることにする。ロブとジョーダンがリュックからロブスターのサラダ、ニンジンとセロリのスティック、チーズを取り出すと、3人の真ん中に並べてペプシで乾杯をする。遠くにある民家から、ホームパーティでもやっているのかかすかに陽気な音楽が聴こえてきた。