Karrimor × Coyote vol.04

vol.04

旅に暮らし、暮らしを旅するをコンセプトに、
その先の旅を続けてきた雑誌Coyote。
日々の暮らしから過酷な冒険まで、
あらゆるシーンに寄り添ってきたkarrimor。
日常からの冒険譚をつなぐ。
karrimorのアイテムとともに、
旅人がより憧れる辺境への物語を紹介します。

photography:ただ
text:Coyote

Karrimor × Coyote vol.04

vol.04

旅に暮らし、暮らしを旅するをコンセプトに、その先の旅を続けてきた雑誌Coyote。日々の暮らしから過酷な冒険まで、あらゆるシーンに寄り添ってきたkarrimor。日常からの冒険譚をつなぐ。karrimorのアイテムとともに、旅人がより憧れる辺境への物語を紹介します。

photography:ただ
text:Coyote

海の先へと続く道

ハワイとはポリネシア語で「神のいる場所」。HAWAIIの単語は“HA”はインスピレーション、“WAI”は水、そして“I”は神、超自然を意味する。かつてこの神の島・ハワイ島を南北に縦断した作家の紀行文を読んだことがある。

南の海岸線から標高4000メートルを超える二つの山、マウナ・ロアとマウナ・ケアを経て北の海岸線まで、全長200キロに及ぶ9日間の過酷な道程。乾燥した砂漠地帯、巨大シダの熱帯雨林、溶岩の冷え固まった大地、噴火した小さな岩からなる山岳地帯、そしてマウナ・ケア山頂を覆う雪。過酷な旅のなかでハワイの誕生と古代人たちの足跡に思いを馳せ、この島の未来を占う作家の手記は、強い憧れとともにハワイ島の旅へと駆り立てた。

彼と同じように、歩くことでハワイ島を深く知りたいと思った。ここには海も山もあるし、こちらのスタンス次第できっとどんな旅にもなり得る。そして想像を超える光景との出逢いがあるかもしれない。

だからこそ、旅先でのたくさんの「もしも」を想定して、長時間背負っていても疲れないridgeを選んだ。もしも予定を変更してでも歩いてみたいトレイルに出逢ったら、もしも途中で雨が降ってきたら、もしも日没までに戻ってこれなかったら、もしも道の先に素敵なビーチを見つけたら……。

ホテルでパッキングを済ませると、島を周遊するハイウェイを南へと車を走らせる。目指す場所は「Road to the Sea(海への道)」と名付けられた道だった。ハワイ島に長く住んでいたことがある友人が教えてくれたその道は、かつて溶岩が荒々しく流れて冷え固まった大地をブルドーザーで海までまっすぐにならしただけの道で、四駆でしかアクセスできないハワイ島で1、2を争う悪路だそうだ。

空港近くの町、カイルア・コナから1時間ほど車を走らせると、右側にそれらしき分岐が現れた。道は舗装されておらず、レンタカーでの乗り入れは当然禁止となっている。Googleマップを開いて海までの距離を測ると片道6マイル程。休むことなく歩けば2時間ちょっとで海に出られそうだ。来る途中にスーパーで買った特売のお弁当と水2リットルをridgeに詰めたら、いよいよハワイでの旅が本格的に始まる予感にわくわくした。

ハイウェイの周辺には木が茂っていたが、トレイルを歩くにつれ次第に視界が開けてきて、やがて見渡す限りの黒い溶岩の大地が広がった。この先にあるはずの海はまだ見えてこなかった。変わり映えしない単調な黒い道を黙々と歩きながら、これだけ凸凹な道は四駆でも厳しかっただろうなと、歩くことを肯定するように独り言をつぶやく。

道の両脇にある溶岩にふと目をやると、さっきまで見落としてしまっていたが、溶岩の割れ目から植物が顔をのぞかせていることに気づいた。シダだった。植物は堅い溶岩の上に育ち、長い時間をかけて岩の奥深くへと根を張り、岩を少しずつ土へと変えていく。すべてが焼き尽くされた場所で、再び次の生命が育つ基盤を整える。ハワイ諸島のみならず、何億年もの間、地球の歴史はこうやって繰り返されてきたのだろう。

昨年5月のキラウエア火山の大規模な噴火が頭をよぎった。溶岩に飲み込まれてしまった民家や道路は、長い時間をかけてやがて自然が取り戻していくのだろうか。誕生と破壊と再生、繰り返されてきた生命のサイクルに思いを馳せた。

太陽がちょうど真上に昇る頃、ようやく海へとたどり着いた。溶岩の黒い砂でできた海岸には誰もいなかった。波の音に誘われるように、ridgeのフロントポケットに忍ばせておいたサンダルに履き替えて海岸線を歩く。砂の粒が荒いためか水は透き通り、歩き疲れた足を優しく癒してくれる。ここは潮の流れが特殊で、沖に集まるプランクトンを求めてジンベエザメがやってくるという。目の前の海のなかには、日本の海とはまったく違う世界が広がっていることを想像するとなんだか楽しかった。

ここからさらに南に下るとサウスポイントという岬がある。そこは昔、ポリネシア人がタヒチからの長い航海の果てにハワイにたどり着いた最初の場所だという。双胴船と呼ばれる原始的なカヌーによる、4000キロに及ぶ壮大な旅。古代ポリネシア人は一体なぜ、この海の先に存在するかもわからない陸地を求めて命がけの旅に出たのだろうか。

海の向こうへと一羽の鳥が飛んでいった。あの鳥も旅をしているのだろうか。波打ち際の岩に腰掛けて海を見つめながら、心は壮大な旅へと誘われていた。

道の先へと連れ出してくれる オールラウンドなリュック

ridge

20,800yen +Tax (30L)

22,500yen +Tax (40L)

発売以来、疲労軽減・快適性を最優先に改良を重ねてきたリュックがリニューアル。フロント部の大容量ギアポケット・背面の活性炭加工を施したメッシュを新しく採用。サイズは30Lと40Lの2種類で、カラーは全6色。

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