今回訪れたのは、ニュージーランド・南島でも有数の登山コースとして
知られるアスパイアリングハットへとつづくトレイル。2泊3日をかけ、ハット(山小屋)から
さらに氷河を望むピークを目指した。まずは前編をお届けする。

ニュージーランドのトラック(現地ではトレイルのことをこう呼ぶ)は谷間の平野からスタートする。両側にそびえる山々は、かつて氷河期だったころに氷河が削ったために峻険な岩肌を露出しているのだそうだ。

雄大。そんな言葉が頭に浮かぶような、おだやかでありながらも冒険心をそそる風景のなかを歩いていく。とはいえ歩いているトラックは牧草地という側面もあり、どこかのんびりとしている。崖から流れ落ちてくる雪解け水は小さな川となり、その小川をいくつも超えていく。

ロングハイクとは旅のようなもの。想像を超える風景、予期せぬハプニングも醍醐味だ。牧草地として解放されている平野にはまるで野生化したような牛が徘徊している。近くとこちらを警戒し、伺う。拾った草でコミュニケーションをとるのも面白い。

トラックを歩いていくにつれデイハイカーもまばらになり、気づけば静かな風景に包まれていた。川沿いでひと休みする瞬間、ふと歩いてきた方向を振り返る。

夏の盛りだというのに、山々には雪や氷河が見える。一年を通して、ハイキングからクライミング、スキーができるのはニュージーランドならではの自然環境。つまり、ギアやウェアの対応力が求められるフィールドだということなのだ。

新型〈cougar〉では、さらに背面システムが進化。ショルダーハーネスのフィット感やヒップベルトの密着感のほか、定評のあるサイズアジャストシステムも使いやすさが向上した。長距離歩いて気づく快適性と安定感が大きな魅力となっている。

道すがら咲いていた花に心を奪われる。リュックサックの負荷が少ないからこそ、感覚が研ぎ澄まされ、気づきも増えてくる。南半球ならではの地形や植生はとても興味深い。

テント場のある小屋まであと少し。谷はだんだんと深くなり、木々も鬱蒼としてきた。南洋ブナと呼ばれる広葉樹の樹林帯を歩いていく。長時間の歩行でも肩が痛くならないのは、〈cougar〉の背面システムによるところが大きい。腰でしっかりと荷重を支えることで肩への負担を軽減できるのだ。

アスパイアリングハットに併設されているキャンプサイトに到着。連なる山々と氷河、森、平野、小川…。ここまで歩いてきた者だけが出会うことのできるまさに絶景が広がっていた。

夜半、テントから抜け出してみると満天の星空が広がっていた。南半球の星座を探してみたが、あまりにも星が多すぎて、ただただ見上げるばかりだった。