karrimor × Coyote vol.03

vol.03

旅に暮らし、暮らしを旅するをコンセプトに、
その先の旅を続けてきた雑誌Coyote。
日々の暮らしから過酷な冒険まで、
あらゆるシーンに寄り添ってきたkarrimor。
日常からの冒険譚をつなぐ。
karrimorのアイテムとともに、
旅人がより憧れる辺境への物語を紹介します。

photography:ただ
text:Coyote

karrimor × Coyote vol.03

vol.03

旅に暮らし、暮らしを旅するをコンセプトに、その先の旅を続けてきた雑誌Coyote。日々の暮らしから過酷な冒険まで、あらゆるシーンに寄り添ってきたkarrimor。日常からの冒険譚をつなぐ。karrimorのアイテムとともに、旅人がより憧れる辺境への物語を紹介します。

photography:ただ
text:Coyote

北に遊ぶ

スウェーデンとノルウェーを結ぶE10号線を国境に向かって北へと車を走らせる。ここら一帯はウィンタースポーツの楽園だ。なかでも大自然のなかでのアイスクライミングは、北極圏まで来た目的の一つでもあった。クライミングパートナーの友人と一緒に、前日に見つけたポイントへと急ぐ。

国境付近の町アビスコを通り過ぎる。高い山こそ少ないが、凍てつく寒さが辺りを真っ白に染めて独特の景観を作り上げる。ようやく辺りが明るくなり始めた頃、時刻は9時を回っていた。来た道を振り返るとスウェーデン北部の象徴的な山、ラポーテンが鎮座する。

稜線の向こうはオレンジ色に染まり、山の中央部分はかつて氷河の侵食によって削られてぽっかりUの字にくり抜かれていた。アビスコの横に広がる広大なトーネ湖は全面凍結していた。氷の上に雪が降り積もり、真っ白い雪原が広がる。その上をいくつもの二本線が交差する。スノーモービルの跡だ。ここ以外にも他の湖や川でもスノーモービルの跡をよく見かけた。極北の冬は長く厳しい。だからこそ人々はいかに冬を楽しむかを考えてきたのだろう。

目指していたポイントに到着した。E10号線沿いに伸びる15mほどの小高い崖には、幅およそ50mにわたっていくつもの氷の滝、氷瀑ができていた。既に先客がいた。10人ほどのパーティが同時に3本の氷瀑を登っていた。こんなにアプローチの良い場所で順番待ちをすることなくアイスクライミングを楽しめるのは北極圏ならではだろう。日本なら氷瀑を求めて山奥まで登っていかなければならない。一旦近くに車を停めて、40代くらいのリーダー格の男性に挨拶がてら声をかけてみる。ニコニコと微笑みながら、遠い日本からの来客を歓迎してくれた。

「良ければ一緒に登らないかい? トップロープで良ければ、今僕らが張っているザイルを使いなよ」
せっかくなのでお言葉に甘え、グループに混ぜてもらうことにした。ハーネスを履き、ヘルメットとアイゼンを装着する。この旅の間ずっと着ているネビスパーカーをハードシェルの上から羽織り、携帯食や真空ボトルなどのすぐにでも凍ってしまいそうなものをインナーポケットに詰め込む。軽く準備運動をすると、パートナーをまずは登らせることにした。ザイルをハーネスにセットし、両手にアイスアックスを握るとさっそく氷壁に取り付いた。

気温は-20℃を下回っていた。何重にも重ね着をした上からネビスパーカーまで羽織っているので体はだいぶ温かかったが、露出している顔は寒さでこわばった。氷はよくしまっていた。アイスアックスを思いきり振りかぶって硬い氷に突き刺し、今度はアイゼンのつま先を何度も氷に蹴り込む。微細な氷の破片が空気中を舞う。一歩一歩、慎重に上へと上がっていく。

パートナーの動きに合わせてザイルをたぐり、程よくザイルのテンションをキープする。ゴールまであと二手というところだろうか。ビレイする手に力が入る。最後、氷瀑のトップに両手のアイスアックスを突き刺すと、パートナーはこっちを振り返って静かに右手をあげてガッツポーズを見せた。

ゆっくり地上に降ろしてあげると、インナーポケットから真空ボトルを取り出して彼に差し出した。たちのぼる湯気が顔のこわばりをほぐしていく。今朝ホテルでいれてきた紅茶はまだ温かかった。 静寂に包まれた北の地で、二人静かに祝杯をあげた。

極寒を楽しむためのオーバーダウン

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厳冬期登山に対応するオーバーダウン。撥水素材で保温性を維持しながら、ストレッチ性と通気性を確保することであらゆるシーンで活躍。背面には〈POLARTEC NeoShell〉を使用。カラーは全3色。

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