Karrimor × ワンダーフォーゲル

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同じザックの人

引っ越しのための荷造りをしていたとき、クローゼットの奥底から使い古したザックが出てきた。

「そりゃ年季モノだな。それ持ってくの?」
来週、夫になる(はずの)人が言う。カリマーの淡い桃色の40ℓ。たしか登山を始めてすぐに買ったものだ。ポケットがたくさんあって初心者でも使いやすいですよと、登山用品店ですすめられて買ったのだった。実際使い勝手がよく、テントを担いであちこち山も登った。北岳、奥穂高岳、八ヶ岳、屋久島の山をつないで縦走したこともあった。

これと同じザックを背負った人に山で会ったことがある。少し年上の男性で、槍ヶ岳の中腹、天狗原のお花畑で腰をおろしていたとき、偶然、一緒になった。互いのザックを見てほぼ同時に「あ、」となったのだった。
彼は単独行だった。私もひとりで歩いてはいたが槍ヶ岳山荘で仲間2人と落ち合う予定で、彼女らは北穂から大キレットを経て槍ヶ岳に至ることになっていた。
「初単独行なんです。ひとりだとどうしても速くなりますね。すぐ息が上がっちゃう」
私もまた、ひとりで山を歩くのは初めてだった。何度か歩いたことのある道とはいえ、ひとりは心細い。無駄に気が急いて予定よりだいぶ速いペースでここまで来ていた。山荘まで一緒に登ろうと提案したのはどちらだったろうか。私たちはペアルックならぬペアザックで山頂をめざすことになった。

「飴ちゃん、食べますか?」
彼はウエストベルトにある小さなポケットから飴やらラムネやらチョコレートやら、実にさまざまな菓子を取り出して分けてくれた。「大阪のおばちゃんみたいだ」と言うと、「それ、よく言われる」と笑っていた。

山荘へ続くつづら折りを登りながら話をした。彼も同じく東京でひとり暮らしをしていること。子どものころから音楽が好きで、今は映画音楽をつくる仕事をしている。楽器はバイオリン、たまにピアノも弾く。好きな山は常念岳。沢沿いの道を登っていくのが気持ちいいから。お酒が好き。などなど。
話しながら歩いたおかげで息が上がらず、予定どおり山荘に着いた。テラスでは先に着いた仲間が宴会を始めていたので、彼とはそこで別れた。翌日上高地へ下るというから、もしバス停で会えたらビールでも飲もうと約束したが、結局、会うことはなかった。

埃っぽいザックをから拭きし、段ボールに詰める。ウエストベルトのポケットから溶けていびつになったレモンキャンディが出てきた。彼の真似をして、いつもそこに飴を忍ばせて歩く癖がついていたのだった。

あれから何度も上高地を訪れ、ほうぼうの山へ登った。私はいつもどこかで自分と同じザックを背負った人がいないか探していた。思い立って「映画音楽/作曲家」でネット検索をしたことも何度かあったが、どうにもならなかった。私たちはお互いの連絡先はおろか名前さえ知らなかった。私はまだ20歳になったばかりだった。

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