自由に歩く

バスを降りると、そこにはもう何もなかった。あるのは、はるか彼方まで折り重なる山々だけで、バスが走り去ってしまうと音すら感じなくなった。

4年勤めた会社を辞めてアラスカに来た。今風にいうとパワハラだと思っていたけれど、上司には「堪え性がない」と言われた。まあそうなのかもしれない。ぼんやり放浪できたらどこでもよかった。ちょうどアラスカを歩くという山仲間がいたので何となくついてきたのだが、なんというか、もうスケールが違う。

足元には登山道などというものはない。その代わり野草がびっしり生えていて、どこに足を置いても申し訳ない気分になる。登山道がないのにどうやってルートを決めるのか。だいたい目的地だって定まっていない。友はリュックのサイドポケットから地図を出して見ている。私が日本で使っているものとは違って、バス停も山小屋も何の表示もない。あるのは川といくつかのピーク、等高線だけだが、友は「この沢はクマがいそうだから避けよう」とか、暗号を解くようにルートを決めていく。地図を「読む」というのは、決められたルートをなぞることじゃない。日本の山をのほほんと登っていた私は、そんなことすら考えたことがなかった。

尾根の取付で休むころには膝が完全に死んでいた。あれもこれもと詰め込んできた60ℓのリュックは自分の体重より重くて、歩くたびに体が軋んでいるような気がした。
「ちょっと持ってやるよ」
友が私の上着やらサンダルやらを背面ポケットにねじ込む。同じ1泊分の荷物を持っているというのに彼のリュックは35ℓほどで、どこにテントや寝袋が入っているのか謎だ。
「心配性なのは悪くないけど、そのせいで楽しく歩けないって、本末転倒じゃない?」
彼の荷物は軽くて小さなものばかりだった。荷物が減ればリュックも小さく軽いもので事足りる。そうすれば自然と足取りも軽くなる。何をやるにも自信がない私はいつだって能力以上の荷物を背負おうとして、途中でへこたれる。だから自分には無理だったのだと投げ出してしまう。仕事だって同じだ。

尾根を越えると遠くにマッキンリー山(デナリ)が見えた。眼下にはこれまで以上に巨大なスケールで、どこまでも原野が続いている。
「ここから見えるどこでも、好きなところを選んでよ。そこに今夜のテントを張ろう」
そう彼が言うので、遠く、ぽっかりと草原みたいになっている場所を指さした。
「いいね、気持ちよさそうじゃん。行ってみてダメそうだったら、また歩けばいいし」
そうだ、ここには正解なんて存在しないんだったと思う。好きな場所へ自由に行って、間違っていたらやり直せばいい。その繰り返しがあるからこそ驚きがあるし、楽しい。決められた道をただ歩いているだけじゃ、その外の世界に出会うことなんてないのだから。

荷物の減ったリュックは軽くて、視線は自然と前を向いている。あの草原がどんな場所なのか早く見たくて、私は彼を追い越し、原野のただ中を夢中で下っていった。

Karrimor × ワンダーフォーゲル

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