カナディアンロッキーでのアイスクライミング【アンバサダー 稲田千秋】

ultimate〉のフィールドテストと特集コンテンツの撮影のため、カナダのロッキー山脈へ行っていました。3年前にも一度プライベートで訪れたことがある氷の世界です。今回念願の再訪を果たし、アイスクライミング三昧の10日間を満喫しました。

カナディアンロッキーの冬は厳しく、厳冬期にはふもとの街キャンモアでも-30℃にもなる極寒の地です。そのため、標高の低いところでも、日本国内では滅多にお目にかかれないような巨大な氷瀑が形成されます。それがアイスクライミングの対象となり、幅広い層のクライマーに親しまれています。

アドバイザーの成田賢二さんをはじめ、撮影スタッフ数人で訪れた今回の遠征。快適なロッジで楽しい共同生活です。

1日アイスクライミングをしたら、日が落ちる頃スーパーで買い出しをして肉肉しい夕食でタンパク質補給。お腹が満たされたらまたガイドブックを見て「明日はどこへ行こうか・・」と作戦会議です。

大陸の内陸部であるロッキーは日本の冬と比べて非常に乾燥しており、積雪の状態を読むのがとても難しいという特徴があります。そのため、日本の雪崩理論をそのまま適用することは困難。現地のクライマーでも危険度の予測は非常に難しいため、広域な雪崩予報を提供しているサイトなどを利用して総合的に判断するしかありません。

車がスタックして雪と格闘するなどのハプニングもありましたが、どちらかといえば天候には恵まれ、お目当てとしていたおおよその氷瀑は登ることができました。

今回は、極度の低温や強風といった厳しい環境で〈ultimate〉のウエアをテストしました。軽く動きやすいウエアはシビアなクライミングでもストレスなく、また高い保温性からビレイ中も身体の冷えを感じることなく終始快適でした。

マルチピッチでは、ビッグウォールでのクライミングをテーマに開発した〈ultimate 22〉も活用。無雪期用に作られたリュックサックですが、氷瀑においてもとても使い勝手が良かったです。〈epic insulation parka〉2着と1Lテルモスが収納でき、氷瀑に設置したアンカーにぶら下げて手袋をした状態での物の出し入れもスムーズでした。

現地では、地元の方に撮影協力もしていただきました。

ふもとの街キャンモアには、この土地に魅せられた多くの日本人移住者がいて、知り合いの日本人クライマーも暮らしています。この遠征中に近場のドライツーリングのゲレンデに連れて行ってもらったりもしました。

本当にたくさんの方々にお世話になり、カナディアンロッキーを満喫。冬だけでなく夏もアウトドアアクティビティ豊富な土地で、人々の暮らしとアウトドアがとても近くにある素敵なところ。何度でも訪れたくなるような場所です。

なかでも感動的だったのが、「Weeping Pillar(ウィーピングピラー)」と「Curtain Call(カーテンコール)」という、圧倒的な内容とスケールを誇る2つの氷瀑を完登したことです。この写真はWeeping Pillarの核心となる2ピッチ目をリードしているところです。全長60mほどもある中のほぼ半分が垂直という厳しいピッチで、精神力と持久力を尽くした渾身のトライとなりました。

どちらも3年前からずっと憧れていたライン。写真ではその美しさと大きさをお伝えしきれませんが、間違いなく世界でも有数の大氷瀑です。今回は比較的氷結もよく、実力あるパートナーのおかげもあって楽しく登ることができました。

ロケ撮影の本編は11月に特集コンテンツはこちらでご覧いただけます。

世界に平和が戻るまで、しばらくはこうした海外遠征も難しくなるかも知れませんが、来たるべき日のために日々精進を続けたいと思います。

稲田 千秋

稲田 千秋(いなだ・ちあき)形成外科医、クライマー。学生時代から登山、クライミングに熱中し、季節やジャンルを問わず様々なスタイルでフィールドアクティビティに興じる。現在はフリーランスで世界中を旅しながらクライミングを楽しむ傍ら、国際認定山岳医として、日本の山岳医療発展のため活動する。2016年 Yosemite国立公園 El Capitan "The Nose"完登。2019年 ペルーアンデス Alpamayo "French Direct"登攀など。

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