「山旅」創り、はじめました【アンバサダー 一瀬圭介】

この冬も「極地バイクパッキングレースの旅」の続きとなる極北のレースに出場する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により海外への渡航が難しいため出場レースのエントリーをキャンセルしました。

この状況が落ち着くまでは国内でトレーニングを続ながら、福島県の観光周遊事業としてロングトレイルのルートづくりやファットバイクやe-Bikeなどを使った山麓のアクティビティ開発などを請け負い、地元の新たな「山旅」創りに注力して活動を行っていきます。

その事業は磐梯山、吾妻山、安達太良山という福島県の3つの百名山と、その周辺の山麓に跨る壮大なエリアに及ぶプロジェクトで、これから数年をかけて検証・検討が行われます。その一環として、昨年の秋からファットバイクを使った体験型のライドツアーもはじめました。

野外の新鮮な空気を吸いながら木立の中のオフロードを自転車で走るのは、皆さん楽しそうでした。自粛生活で室内に籠もりがちな日々ではありますが、そのようなコロナ禍でも感染対策を考えながら身体を動かせる環境も作って行かなければならないと思っています。

そのためには、自転車が走れるトレイルを整備・維持していくことも大切になってきます。現在、土地の管理者の許可を得て、地元の荒廃した里山のトレイルを整備する活動を行っています。笹や灌木で藪と化してしまった道を刈り進め、無数にあった倒木なども取り除き、数キロではありますがファットバイクやトレイルランニングができるトレイルが再び姿を現しました。

自転車で走れば数分しかかからない距離でも、一旦藪になってしまえば整備するのに何日もかかってしまいます。これを継続的に維持していくためには、それに掛かる経費や労働力を生み出す「仕組み」を考える必要があり、現在いくつかの試行を開始しました。

トレイルで遊ぶ利用者に簡単な整備作業を手伝ってもらうのも、その取り組みのひとつです。「トレイルワーク」と呼んでしまえば、それも立派なアクティビティに。そして何よりトレイルの整備を体験することで自然環境の強さと弱さを身をもって感じ、それぞれの「気づき」を誘発する良い機会になると思っています。

実際にトレイルワークを体験した方々に話を聞くと、「楽しい」「夢中になれた」「もっとやりたかった」などという声も聞かれました。何から何まで準備された環境ではなく、自分で作って自分で楽しむというプロセスをこれからも体験プログラムの中に入れて、参加者の経験価値を高めながら維持活動にかかる労働力を補填していこうと考えています。

それ以外にもe-Bikeや電動アシストサイクルを観光周遊用としてレンタルし、その収益を里山を含めた地域の環境整備に充当するエコサイクルも検討中です。この話題に関してはまた別の機会に行うことにしましょう。

そうこうしているうちに季節は冬に。そして、いよいよファットバイクの雪上ライドのシーズンがはじまります。ファットバイクの良いところは、冬に雪が積もる寒冷地でも乗れることです。その太いタイヤの接地面積と浮力を活かして、雪や氷の上でも走破することができるのです。

私がレースに参加しているアラスカでは、ファットバイクが通勤・通学など日常の交通手段としても使われています。現地の自転車屋さんで売られている車種の中でもファットバイクはその多くを占めています。以前のブログでもご紹介しましたが、ファットバイク用のスパイクタイヤやスタッドレスタイヤも販売されているのです。

この冬は、ここ福島県でも遊休状態のスキー場ゲレンデを使ってファットバイクの雪上コースを作り、雪上ライド体験や雪上レースなども行います。年末年始にまとまった降雪があったので、バギーやスノーモービルを使ってコースづくりを始めました。トレイルの整備も手がかかりますが、雪は雪で圧雪したりマーキングを取り付けたり・・と手間がかかる作業がたくさんあります。

・・それを待ちきれないという方もいらっしゃったので、これから作るコース外ではありますがスノーライドを何人かに体験してもらいました。普段雪道を自動車では走っていても自転車で進んでいくという感覚は新鮮なようで、自然と笑顔がこぼれます。無雪期のオフロードを走るのとはまた別のアクティビティとして、多くの方々にスノーファットバイクを楽しんでいただけそうです。

温暖化の影響もあるのでしょうか。私が暮らす安達太良山域にも幾つかのスキー場がありますが、ここ数年は全体的に降雪量が少なく、スキーやスノーボードが滑走するゲレンデとして営業できる期間が少なくなってきています。そこでグリーンシーズン・ウィンターシーズンを通して遊べるアクティビティとしてのファットバイクの可能性を探るため、モニターツアーなども募集・実施していきますので是非遊びに来てください。

次回以降のブログでは、冒頭で少し触れた新しいロングトレイルを創るプロジェクトついての話題にも触れていきたいと思います。今回ご紹介したのは山麓=丘での活動、そしてロングトレイルは、その丘と丘を繋ぐ山の旅です。「丘の暮らしと 山の旅」・・私の会社名「丘と山製作所」の由来でもあり、今後の活動におけるテーマでもあります。

では最後にkarrimorプロダクトの紹介です。私のアウトドアライフを支えてくれているギア・ウエアを1アイテムずつピックアップしていきます。今回は〈ridge30〉。オリジナルモデルが20年も前に発売され、マイナーチェンジを繰り返しながら現在に至るカリマーのレジェンドと言っても過言ではないプロダクトです。

本体重量は約1.5㎏ということで、このサイズのリュックサックとして超軽量とは言えません。しかし、山行中の疲労軽減・快適性を最優先に考え、開発・改良を重ねてきたモデルだけあって、荷物を入れた時の背負い心地と荷重分散が抜群。長時間歩くとその効果を背中と腰で感じることができます。

さらに、現在販売されているこの最新のモデルは、背中と触れ合う背面部のクッション部分に吸湿発散に優れた「活性炭加工」のエアメッシュが採用されていて、行動中の背中のムレを軽減してくれます。野営時にそのクッション面を枕として使用していますが、汗による臭いも気にならず旅の快適性が向上しました。

お気に入りカスタマイズも紹介しておきます。雨ぶたのトップループに、アイスクライミング用のアックスのリーシュをつけています。伸縮性のあるリーシュコードにはウェア類、カラビナ部分には脱いだグローブや休憩中のストックなどを掛けておいたり、混み合った山小屋などではリュックサックの取り違いが無いように柱などに繋げておくことも。

また、稜線や傾斜地などでリュックサックを下ろす時には、まさにリーシュ(流れ止め)の用途で、木の幹に巻いて固定します。身体が持って行かれ真っ直ぐに歩けないくらいの暴風の中では、腰に巻いてリュックサックだけが吹き飛ばされないようにしたりと用途はさまざまです。いくら装備を携行していてもリュックサックを失ってしまうと元も子も無いですからね。

参考までに、最大収納量はこのような感じです。カタログでの容量表記は30リットルですが、うまくパッキングをすれば40リットル近く収納できます。日帰り登山にはもちろんのこと、無雪期の1泊2泊の縦走やファストパッキング(走ったりもしています)にもお薦めできるリュックサックです。

一瀬 圭介

一瀬 圭介(いちのせ・けいすけ)プロマウンテンアスリート・山岳カメラマン。アラスカなど極北地帯の雪上を数百キロ進む超長距離バイクパッキングレースを中心に、ファットバイクによる競技活動を行う。また、山岳カメラマンとして国内外のアウトドアフィールドにおける映像制作なども手がける。2020年より福島県二本松市岳温泉にて「丘と山製作所」を立ち上げ、磐梯・吾妻・安達太良山域にてアウトドアアクティビティに関する事業も展開する。カリマー/ラ・スポルティバ アンバサダー

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