どこ行くの?Vol.5 今津聡子(写真家)

自分らしく旅を愉しんでいる女性たちに、こだわりの持ち物を見せてもらおう!という連載。第5回目となる今回は、カルチャーや旅、ファッションを中心に、多数の雑誌や書籍で活躍中の写真家の今津聡子さん。プライベートでも旅やドライブが趣味という彼女に、昨年のロードトリップの話を伺いました。旅がもっと自由に身軽になるアイディアが詰まった、旅のアイテムも見せていただきます。
※この記事は、旅と暮らしをつなぐ雑誌『BiRD』で連載中の拡大版です

photo NOZOMI KATO
text BiRD
今津聡子さん(写真家)


ロードトリップで目にしたアメリカの新しい一面

写真集や雑誌がいっぱいに並ぶ本棚を中心にレイアウトされた今津さんのリビング。その雰囲気は、彼女の写真のようにシンプルで“自然体”という表現がぴったり。撮影で多忙な彼女ですが、昨年思い切ってまとまった休みをとり、3週間近くアメリカ西部〜南部のロードトリップへ。彼女にとってアメリカは、数えきれないほど訪れている馴染み深い国。なのに、今回の旅は発見の連続。かの国の新しい側面を、多数目にします。
「オレゴン州のポートランド在住の友人と一緒に車に乗り込み、まずはオンタリオへ。そこからアイダホ州、ユタ州、アリゾナ州、そしてテキサス州のマーファまで3週間弱の旅でした。当初は彼女がもつキッチン付きのバンで行く予定でしたが、出発前になんと突然の故障……。急遽、代わりのピックアップトラックを使いましたが、結果、各地のお店で食べ歩きができ、それはそれで美味しい旅になりました。またある時は、陽が暮れても宿が見つからずに仕方なくウォールマートの駐車場で一夜を明かしたり、また出発前のロスタイムが理由で、もともとニューオリンズ(ルイジアナ州)を目指していたところ時間切れで、マーファ(テキサス州)で引き返すことになったり……。計画通りにいかないことも多かったですが、結果的にとても思い出深いものになりましたね」

BiRD_本文内写真_01

たしかに、2度と同じ旅はできないくらいに濃厚な旅。なかでも印象深かったのは、南部の食文化といいます。
「南部の昔ながらの食事は、肉や野菜をローストするBBQスタイルが多く、シンプルなのに素材の味が凝縮され、味わい深いんです。帰国後にこの本『人間は料理をする』と出会い、アメリカ南部の“火”の食文化にさらに興味が沸いてきました。BBQはもっとも原始的な調理法で、南部では本来生け贄のための儀式だったこと、火をコントロールする“火の門番”がいること、人間が調理を覚えたことで余暇ができ文明が生まれたこと、料理には人を繋げる力があること……。南部の食文化には、そんな料理の根本が詰まっていました」


旅で気づく、人生に必要な持ち物

もうひとつ、現地で今津さんが憧れたのは、アメリカ特有のキャンピングカー文化。
「アメリカでは日本よりずっとキャンピングカーが普及していて、個性的な車をいくつも見ました。家を売ってキャンピングカーで暮らしている人もおり、そんな車には暮らしの道具がすべて積まれているわけで、持ち主の人生そのものが現れていると思います。彼らに比べたら短い期間ですが、私も車で生活するうちに、生きるのに必要なものって本当はごくわずかなんだと思えてきたんです。その、自分のなかで不要なものが徐々に削がれていく感覚は、物質的にはもちろん、精神的にもあるかもしれません。『HOME IS WHERE YOU PARK IT』というアメリカのキャンピングカーを集めた素晴らしい写真集があるのですが、旅が恋しくなった時にいつも眺めています」

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そんな今津さんの旅の持ち物を見せてもらうと、究極にシンプル。
「アシスタント時代から使っているカリマーのバックパックを使うこともありますが、ロードトリップは、小さめのキャリーひとつで十分でした。女性2人なうえ、治安の悪い場所もあるので、とにかく綺麗な格好は避け、出発前にポートランドの古着屋で調達した古着を洗濯し繰り返し着ることにしました。オシャレとはかけ離れたこちらは、上下で5ドル(笑)。カメラも、黒いシールを貼ってロゴ部分を隠すなどして、できるだけ目立たないようにしました」

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今津さんにとっては商売道具でもあるカメラですが、プライベートの旅では何を使っているんでしょうか?
「今回は、MAMIYA 7という6×7のカメラとライカ2台を持参しました。ダイナミックな風景などをしっかり撮影するにはMAMIYA 7を、移動中などで気軽に撮影したい時にはライカ、というふうに使い分けています。なかでも手に馴染んだライカM6が最も活躍します。実はこのM6は、手に入れてからなかなかしっくりこなくて、結局1年ほど使っていませんでした。それが徐々に慣れてきて、今では自分が思っていた絵と違うものが撮れたとしても『これはこれで味がある!』と思えるまでに(笑)。今ではどんな旅にも手放せません」
また現地では、悪い夢を取り除いてくれるといわれる「ドリームキャッチャー」が加わりました。
「ユタ、コロラド、アリゾナ、ニュー・メキシコの4州が隣接している『4 corners』というポイントで、同行した友人が突然プレゼントしてくれました。彼女はもともとアメリカ先住民の血が少し入っていて、どちらかというと物静かなタイプ。そんな彼女からの突然のプレゼントはとても印象的でした。すべて天然素材から先住民が作ったものだそうで、細かい部品までもすべて手作り。ドリームキャッチャーはお土産として有名ですが、本来は、人びとの暮らしに根づく民藝なんだと感じました」

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そんな旅をともにした彼女とは、現在、合同の作品展の話もあがっているそうで、どんなものになるか気になるところ。「まだ模索段階ですが、合同展示ができたらいいねと話しています。旅の思い出からもたくさんのアイディアが活かされそうです」


BiRD_旅の持ち物_09

旅の持ち物

ストライプのシャツ/ロードトリップ前にアメリカの古着屋で購入したシャツ
切りっぱなしのジーンズ/シャツと一緒に購入した古着のジーンズ
バンダナ/ハンカチやスカーフや小物入れ代わりにもなり、何かと活躍するバンダナ
カメラ/旅へはもっぱら、機動性に優れたライカM6を持参。いくつか保有するなか、2007年に購入した一台
菩薩のポストカード/アメリカ旅行の出発前にお母さんが送ってくれた平等院の雲中供養菩薩のポストカード
お守り/同じタイミングで友人がくれた明治神宮の旅行安全御守
インナーダウン/コンパクトになるインナーダウンはどんな旅にも欠かせない

BiRD_おすすめ_09

今回のおすすめアイテム

airport pro 40

[ エアポート プロ 40 ]
機内持ち込みや国内旅行に便利な40ℓサイズのソフトタイプのキャリーケース。収納式ショルダーハーネスを内蔵し、必要なときにはザックのように背負うこともできます。フロント部分についた小型デイパックを取り外せば、搭乗時に本体を預けた後や、現地での行動時などに役立ちます。旅行の荷物をたっぷりと収納できるメインコンパートメントと、前面にはフロントコンパートメントを用意。荷物が取り出しやすく、外出時でも容易に取り出せます。アップルグリーンの裏地がついた内部は、視認性が高いため荷物が取り出しやすい。シンプルな見た目は、ビジネスにもレジャーにもマッチします。

ポイント

  • 収納式ショルダーハーネスを装備
  • フロント部分は取り外し可能な小型デイパック仕様
  • 小物の整理に便利なインサイドオーガナイザーポケット付き

BiRDimazu

今津聡子(いまづ・さとこ)

1978年大阪府生まれ。都内スタジオ勤務を経て写真家・若木信吾氏に師事。2004年独立後、フリーランスとして主に雑誌、カタログ、広告などの旅やポートレイト撮影で活動中。2012年にメキシコで撮影した写真で初の個展「DIARIO」開催。2014年 Café & Meal MUJI 新宿にて『a piece of Summer』開催
http://www.satokoimazu.com/

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