+karrimor vol.7 剣岳 前編/熊山 准さんとjaguar 60+10&AR10

春を迎え、新緑がまばゆい季節。とはいえ山はまだまだ残雪のシーズン。
いくつもの切り立った岩壁が待ち構え、難易度の高いルートとして知られる剱岳。
天に向かってそびえる峻険な山容は、数多くの登山客を魅了してきました。
2999mの頂を目指し、ミニくまちゃんことライターの熊山准さんと、2泊3日の山行へ。

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剱岳(2999m)の登頂を目指す今回の山行。ルートは、もっともメジャーな別山尾根コースをチョイス。登山口である室堂までは深夜バスでアクセスし、1日目はベースキャンプとなる剱沢小屋までアプローチ。翌日は1日かけて剱岳までアタック。再び剱沢小屋まで戻り、翌日お昼の便で帰京という、2泊3日の行程です。朝7時。室堂のバスターミナルに到着。東京を出る前の予報は曇りだったのに、窓の外は雨。実は今回の山行にあたり、好天を狙い2度も日程を変更していました。きれいな景色を見ながら登りたいというのはもちろんですが、夏でも雪渓が残るような場所。天候の悪化は事故につながる可能性大。天気予報をチェックすると、山頂アタックとなる明日以降の天気は曇りか晴れ。これ以上天気が悪くならないと判断し、レインジャケットを着込み出発しました。

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取材は7月末。都内では35℃ほどの真夏日でしたが、雷鳥沢まで下ると大きな雪渓があちこちに横たわっていました。ここから剱沢までは3時間30分ほど。立山を訪れる観光客にも人気のミクリガ池を経て、雷鳥沢を越えていきます。本来であれば氷河が削ったカールを見ながら歩くことができるのですが、残念ながらあたり一面は霧でまっ白。雨も強くなってきました。冷たく吹きすさぶ風雨のため撮影を断念して、テント場へ急ぎます。
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剱御前小屋(2450m)で一休みしてから40分ほど下り、やっとの思いで剱沢のキャンプ場へ到着。強風と雨が吹き付けるなか、ペグを打ち込みテントを設営しました。「夕方には止むよ」という登山客の言葉を信じて停滞。濡れた服を着替え、しばし休憩。18時ころには、遠くに剱岳の山容が望めるほどに回復してきました。このテント場は雪渓の下にあるので、雪で冷やされた下降気流が絶えず流れる場所。「天然のクーラーって書いてあったけど、ちょっと寒すぎだよね」。
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夕暮れ時、雲海がうねるように赤く染まっていました。天気が悪いときは大変なことも多いのですが、こんな不思議な光景を目にすることも。山はいろいろな表情を見せてくれます。雪渓から吹いてくる冷たい風のせいもあり、体感温度は結構低め。暖かいご飯を食べ、翌朝に備えて就寝しました。

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夜は再びテントが飛ばされるかと思うほどの雨と風。「風の音で明け方まで眠れなかったよ」と熊山さん。荷物はテントにデポし、飲み物と行動食、防寒着などを持って、アタックスタート。情報収集も兼ね、まずは剣山荘まで行ってみることに。
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剣山荘で情報収集。朝一番で登頂してきたという登山客からは「霧で何にも見えなかった」という不安な声が。でも、午後には天気がよくなりそうとの予報を受け、アタック開始!登りはじめると、さっそく鎖が設けられた急登が目の前に。バランスをとり、安全を確保しながら登っていきます。滑落はもちろん、注意したいのが落石。不安定な浮き石も多く、落石を起こさないように手や足をかける石を見極めて進んでいきます。
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氷河期の生き残り、雷鳥の姿も。森林限界の厳しい世界だけに暮らす貴重な鳥の登場に、登山客の誰もがシャッターを切っていました。しっかりとした足取りの雷鳥を横目に、恐る恐る鎖をつかみ、岩場をトラバース。アップダウンを繰り返しながら、高度を稼いでいきます。

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一服剱からたっぷりと下り、ふたたび登ると前剱(2813m)に到達。本来であれば、剱岳が目の前にそびえ、テント場がある剱沢小屋周辺が俯瞰できるるはずですが、景色は真っ白。いくつかのパーティーとすれ違いましたが、「視界はゼロ」とのこと。

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ここから先が剱岳の核心部。いくつもの鎖場が待ち受けています。周囲はガスっていますが、全身を使って登っていくのでじんわりと汗がにじんできます。ジャケットはリュックにくくりつけ、体温調整。剱岳エリアは、天候によっては強風が吹きやすい場所。予報が好天であってもシェルジャケットは必携です。
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「剱へ→」というざっくりしたサイン。大きな岩がごろごろとしたガレ場などでは、ちいさな目印を見逃さないように登ります。前剱と平蔵のコルの先は、登りと下りでルートが異なるので注意。ちなみに、このルートで遭遇するクサリ場やハシゴは全部で13カ所。一般登山道とはいえ、気が抜けません。
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前剱を越えほどなくしたところで、なんと霧が晴れてきました! ずっと見えなかった剱岳の山容が間近に迫ります。「だいぶ登ってきたと思ってたけど、まだまだ先は長そうだね。見えなかった方がよかったかも(笑)」と熊山さん。
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熊山 准(くまやま・じゅん)

アーティスト、ライター。主な執筆媒体は『R25』『サイゾー』『Mac Fan』『スゴレン』『AllAbout Macガイド』など。作品展示『ミニくまちゃん展 – 3rd Birthday Exhibition』といったアート活動も。
http://www.kumayama.com/

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